突然のことだった。
30年前の春休み、夜中に寝ていた時に電話のベルが鳴った。
朝の四時半くらいだった。そのベルが鳴る少し前に自分は起きたが、再び寝かかっていた時に寝かせるものか、と言わんばかりの電話のベル。それは祖母からであった。祖父が起きて新聞を読んでいたが意識を失っているとのことだった。まもなく死亡が確認された、救急車を呼んでいたが帰ったとのこと。午後祖母の元に皆で行くと、棺桶に入った祖父がいた。まるで眠っている様子だった。身近な人の死は、この時が初めてで棺桶を見るのも当然初めてだった。今にも起きそうな顔をしていた。あまりにも突然だったので、実感はわかず葬儀まで終わった。
もしかしたら、電話の前に自分が起きたのは、祖父が呼んだのかもしれないと今では思ったりもしている。